不動産賃貸業に見られる事業形態は、アセット型事業(不動産など安定した収益を産む資産を中心とする事業)と呼ばれます。
規模は大小さまざまですが、どちらと言うと大きく収益や利益を伸ばすことはなく、毎年コンスタントに一定の利回りを稼ぎ出します。賃貸不動産のほかに、駐車場やラブホテルなどもこの範疇に該当しますが、ラブホテルについては、オペレーションの巧拙で収益力が変わって来るため、完全なアセット型事業とはいえないかもしれません。
また許可の問題から、新規で始めるに当たってはなかなか難しいでしょう。(そもそも、性風俗関係事業に対しては、日本政策金融公庫は融資をしません。)
アセット型事業には、30%程度の自己資本と、70%程度の借入金という資金調達の黄金律がありますので、借入申込前に自己資金を貯めておくことはもちろん、資金使途や資金比率をしっかりと計画立てておく事が融資成功のポイントのひとつと言えます。
近年では将来の年金不安からか、サラリーマンの方も多く不動産投資に乗り出してきており、「サラリーマン大家」なる言葉も出てきています。年収数百万円程度のサラリーマンに銀行が融資するのか?と思われるかもしれませんが、億単位で融資を受けアパートやマンションの一棟買いをしている不動産投資家も多数いらっしゃいます。
サラリーマンは収入の多寡はあるものの収入自体が安定していること、また、融資による資金使途も明確ならば購入物件それ自体が担保になりますので金融機関としてはある程度の適切な事業計画があれば比較的貸しやすい(要は貸し倒れしにくい)ということで不動産投資に対する融資は積極的です。
特に2015年現在は東京オリンピックに向けた値上がり期待やインバウンド景気による外国人流入、円高・爆買い、民泊(色々規制や問題も噴出していますが)など不動産時価も好況のようです。
その一方で東京オリンピック後のことや少子高齢化、それに伴う将来の空室問題も十分注意を払いしっかりとした出口戦略を持っていないと毎月のインカムゲインを手にすることはできても、結局キャピタルゲインの面で個人投資家は痛手を負う可能性があります。
また、不動産投資は年収3,000万円を超えたあたりから税金や社会保険料とのいわゆる「税との戦い」が生じますので、しっかりと不動産投資に強い税理士を顧問につけた上で投資戦略と資金調達戦略を練っていく必要があると言えます。
不動産の収益還元法とは?
収益還元法は不動産の鑑定評価をする方法のひとつで、その不動産が将来生むと予測される純収益から適正な不動産の投資価格を求めるというものです。
収益還元法には直接還元法とDCF法があります。DCF法は直接還元法より正確な数値を導き出せますが、手法がより複雑になっています。
直接還元法では純収益÷還元利回りで収益価格を算出します。
純収益は不動産の賃貸収入等の1年間に得られる総収入から賃貸経営にかかわる維持管理費、修繕費等の1年分の総費用を差し引くことで算出できます。
還元利回りは純収益を不動産の市場価格で割って計算します。
純収益が1,500万円で、還元利回りが6%であれば、収益価格は、1,500万円÷0.06=2億5,000万円となります。
それで、2億5,000万円物件を手に入れれば6%の利益が得られると予測できます。
直接還元法では還元利回りがポイントになりますが、参考になる物件の利回りデータや賃料動向などを分析して決定する必要があります。そのため的確なノウハウを持っていないと正確な還元利回りを算出することはできません。
DCF法は直接還元法のように単年で計算するのではなく、その不動産の保有期間中に得られる純利益と売却時の予想価格を現在価格に直してから不動産の価格を割り出します。
適正な不動産投資価格がわからなければ融資もままなりませんので、まずはこれを把握することが重要です。