テレビで連日報道されている旅行会社てるみくらぶの経営破綻について考察したいと思います。
まず報道で出ている事実としては、
- 2014年9月期以降、営業損益が大幅な赤字だったのに黒字とみせかけていた可能性がある
- 2016年9月末時点で営業損益は約1億1,000万円の黒字としていたが、実際は15億円以上の赤字
- 2016年9月末時点で約75億円の債務超過に陥っていた
- 内容の異なる複数の決算書があった
- 社員数80名の会社で50名の新卒に内定を出していた
複数の決算書というのは明らかに税務署提出用と銀行提出用だと思われます。これを用意している時点で正に粉飾のプロであり確信犯以外の何物でもないと思うのですが、今時そんな粉飾が通るのでしょうかね?
私はここまで大きな企業の顧問をすることはないのですが、実務的に税務署の収受印のない決算書を受けて金融機関が融資実行をするはずはないので決算書の偽造で融資を引っ張ったというのでしょうか。
通常の粉飾(というのもおかしな表現ですが)は、数字をいじって業績のよい決算書を作り、本来赤字で税金を払わないで済むのにそれを払ってでも銀行から融資を引っ張るケースが多いです。
もちろん、金融機関に対する立派な融資詐欺なんですが、資金がストップすると倒産しますので、背に腹は代えられず、支払い不要な税金を払ってでも融資を引っ張るわけですね。
2016年9月期は過去最高の195億9,600万円を売り上げていたらしいのですが、これも事実かどうか怪しいですね。
売上と利益は違うとは言え、過去最高の売上高を記録しておいてそこから半年程度で破綻するとは思えません。
新卒採用の人数の不合理性を考えても、売上増加による前向きな融資として金融機関に説明していたのかな・・・と推察されます。
また、報道でも出ている通り、数年前から赤字に転落したものの、お客様からの預かり金と粉飾決算で得た融資金で事業を回してきたのだろうと思います。倒産する前日まで現金一括キャンペーンとかやってたようですし資金繰りの必死さが伺えます。(資金繰りの必死さというより、詐欺と言われても仕方ないと思いますが)
赤字でも資金繰りがつけば倒産しないのが企業ですし、黒字でも資金繰りに詰まれば簡単に倒産するのも企業です。
旅行業やかつて倒産の報道が出た留学エージェント、英会話スクールなどのようなお客様からの預かり金、前受金が多い業種は資金繰り的には有利なんですよね。目先の手元キャッシュが豊富にあるので。
ただ、実際はそれは自分のお金ではなくお客様のお金ですし、売上金だって前倒しでもらっているに過ぎません。にも関わらず、それを目先の支払いに当ててしまうし、それ故に本来死を迎えるべきタイミングで死を迎えず、ギリギリまで延命できてしまうものですから倒れた時の損害インパクトは必然的に大きなものになります。
今日受け取ったお客様からの入金は当然、今日受け取ったお客様の為に使わないといけないのに、今日受け取ったお客様からの入金を来週出発するお客様(2ヶ月前とかに申し込みをした方)の為に使うわけなんですよね。
これって何かと一緒だと思いませんか?
そう、「年金」です。年金も我々が支払ったお金は我々の為に積み立てられているのではなく、「現在」受給している高齢者の方々の為に使われているのです。相互扶助の精神からは素晴らしいことではあるのだろうと思いますが、はっきり言えば「資金流用」とも言えるのではないでしょうか。
年金の受給年齢も上がって行ってますし、これからもますます上がるでしょう。そしていざ破綻(完全にゼロにはならなくても、今のシュミレーションが崩れたらそれは実質的には破綻です)した時のインパクトは当然てるみくらぶの比ではないでしょう。
資金繰りというのは本当に大変なことではあるのですが、きちんとした試算や正しい経営に基づかないと資金繰りがつかなくなった時点で一気に瓦解します。
それにしても今回の件はお客様側には非もないわけです。格安会社を選ぶから云々という指摘がありますが、実際にどこの会社が倒産するかは外部からは知りようもありません。
今回の倒産劇で一番悪いのは当然会社の経営陣であることは間違いないのですが、業績の監査を行っていた監査法人や税理士、監督官庁、金融機関にも責任の一端はあると言えるのではないでしょうか。
被害者の補償は現実的にはかなり難しいでしょうが、可能な限りの補償と事実究明がなされればと思います。
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