銀行の融資を受ける場合は、契約書を隅々までチェックして、どのような条件で契約を結ぶのかを確認しておくことが大切です。
そのなかでも「期限の利益の喪失」に関する条項のチェックを忘れると、あとで大変な目に遭う可能性があります。
期限の利益とは、約束した期日まではお金を返さなくてもいいという利益です。
通常、借りたお金は毎月分割で返済し、毎月○○日に返済すると決められています。たとえば、1,000万円の融資を10年で返済する契約の場合は、120回の分割払いで完済するわけです。
しかし契約違反をすると、この期限の利益を喪失し、借りているお金を即座に一括返済しなければいけません。
極端な例ですが、1,000万円の融資を10年で返済する契約をしていて、2カ月後に経営が悪化してお金が返せないなどの契約違反があると、1,000万円近いお金を即金で一括返済しなければいけないのです。
それができなければ担保が差し押さえられ、破産…という最悪の事態になりかねません。
金融機関は、貸したお金を確実に回収するためにさまざまな条件を付けて融資を行います。
バブル崩壊後に社会問題となった貸し剥がしは、今も行われています。
貸し剥がしとは、銀行などが今貸しているお金を即座に返すように求める行為です。
期限の利益がありますから、本来なら銀行側の言い分は通らないのですが、期限の利益の喪失を持ちだしてこられると厄介です。
たとえば、契約書の期限の利益の喪失に該当する項目に、返済金の遅延という一文があれば、たった一日の返済の遅れがあっただけで、貸し剥がしが行われる可能性が高いのです。
長い付き合いだから一日くらいいいだろう…といった安易な考えで返済日を遅らせると不利になります。
銀行側はそのときは黙っていても、何らかの理由で融資を引き上げたいときに、過去の遅延を理由に貸し剥がしを迫ってくることが考えられるからです。
法律では期限の利益の喪失について民法137条で、債務者が破産の手続きを開始したとき、債務者が担保をなくしたり、損なったりしたとき、あるいは債務者が担保を提供する義務を遂行しないときに期限の利益が喪失すると定めています。
しかし法律の決まり以外にも、契約ごとに条項が決められているケースが大半ですから、借りる側にとって不利な条件が付いていないか、事前に確かめておくことが大切です。
また、万が一返済が滞りそうなときは、なるべく早めに担当者に伝えるなどの対策をとることも忘れないようにしましょう。