銀行は顧客から預かった預金を貸し出すという形で、個人や企業に融資を行い、経済活動の活性化を促す役割を担っています。
しかし景気の悪化などの影響で、銀行が貸し渋りや貸し剥がしと呼ばれる行為を企業に行い、社会問題となりました。
貸し渋りとは文字通りお金を貸すのを渋ることで、融資を申し込んでも銀行がお金を貸してくれないことをいいます。
貸し剥がしは、銀行が貸しているお金を、まだ返済期限が来ていないにもかかわらず、すぐに返すように求めることです。
貸し渋りや貸し剥がしは、銀行が融資額を減らして自己資本率を上げるために行われます。
バブルの頃は土地さえあればどんどんお金を貸していた銀行が、バブルの崩壊、リーマン・ショックといった金融危機以降は、自己の財務状況改善という身勝手な論理で貸し渋りや貸し剥がしを行うようになりました。
会社にとって、銀行からの融資は命綱です。
貸し渋りや貸し剥がしは行為は主に中小企業に対して行われており、融資が滞れば企業の資金調達や資金繰りに大きな支障が生じます。
政府でもこのような状況を重く見ており、金融庁が地域密着型の金融を促すよう銀行に呼びかけると同時に、貸し渋りや貸し剥がしを行う金融機関の情報を求める金融円滑化ホットラインを開設しました。
→貸し渋り・貸し剥がしに関する情報の受付(金融庁HP)
貸し渋りと貸し剝がしの違い
貸し渋りはこちらがお金を貸してくださいとお願いするのですから、銀行に頭を下げる形になります。
したがって、こちらがいくら頭を下げても銀行がYESと言わない限り、お金が借りられません。(本来借りる側と貸す側は対等ですが、わかりやすくする為、このような表現を用いています。)
一方の貸し剥がしは、銀行が今貸しているお金を返してくださいとお願いする形になり、銀行が頭を下げるわけです。
期限より前にお金を返済する義務はないのですから、銀行がいくら頭を下げても、こちらが納得しなければ銀行の言いなりになる必要はありません。
ただし、融資を受けるときの契約書に、「期限の利益」の損失についての項目がある場合は注意が必要です。
期限の利益とは、返済期限が来るまでお金を返さなくてもいいという意味です。
つまり毎月25日が返済日と決まっていれば、いくら銀行が20日に返してくれと行ってきても、返す必要はないのです。
しかし、期限の利益の損失条件が設けられているときは、それに従わなければいけません。
期限の利益に損失条件は返済の遅延、差し押さえ、破産手続きの開始、提出書類の記載に偽りがあった時などが一般的です。
このような条項が設けられている場合は、一度でも返済日が遅れていると、実際は貸し剥がしの疑いがある要求だとしても、正当な一括返済請求として断れないケースがあります。
また追加融資を餌に貸し剥がしをしてくることもバブル崩壊後に問題となった手法です。
「追加融資をしますので、一旦今の融資を全額返済してください」と甘い嘘に乗ってしまったわけですね。
流石に現在はないでしょうが、確実な融資などありませんので、返済義務のない融資は返済する必要がありません。金融機関側に騙されないようにしましょう。