日本の農林水産業はさまざまな形での質的転換が求められていると言われ続けています。食品自給率の低さをいかに是正していくかという問題も含め、農林水産業に携われる事業者の経営安定化はもちろん、効率化、低コスト化、さらに技術革新などが求められているのです。しかし多くの事業者は中小・零細企業のためなかなか経営環境の改善や新事業の開拓といったことが難しく、それが農林水産業の振興全体の大きな妨げになっているとも言われています。そうした事情もあって日本政策金融公庫が提供している支援制度が特別振興資金です。
その名の通り農林水産業の振興に役立つ事業に対して特別に資金を融資するのがこの制度の柱となっています。新事業の開拓にどうしてもつきまとう資金力の問題を改善するため、一定の条件を満たした事業者に対して有利な環境で資金調達を行っています。
この制度の特徴は融資の対象がかなり幅広は範囲に設定されている一方、融資を受けるためには一定の条件をクリアする必要があることです。「最新の技術もしくは経営方式の導入によって農林漁業者の発展に寄与する事業」を条件にさまざまな条件が用意されています。
新技術の導入はもちろん、経営の効率化や複合化による発展・安定化に関わる内容はもちろん、生産性の向上なども条件に含まれています。さらに近年急速に取り組みが進んでいる独自ブランドの確立と宣伝も対象としており、ブランドイメージの向上が生産物の売り上げ増、ひいては事業の振興に役立つと判断された場合にはそのために必要な資金として融資を受けることも可能なのです。この点は海外進出も含めた点で大きな意味があるでしょう。加えて広域的な事業展開に対しても融資を行うことでこれまで日本の農業の大きな弱点も言われていた小規模経営による生産性の停滞を解消する狙いもあります。
このように条件をクリアしたうえで新事業のために必要な負担金の80パーセント以内を条件に融資を受けることが可能です。具体的な融資限度額を設定せず、パーセンテージで条件を設けている点もポイントで、その分利用の際には綿密な資金計画が求められることになります。どちらも据置期間が3年以内に設定されています。
返済期間は原則として15年以内、ただし直接関わる費用ではなく関連費用として使用する場合には10年以内となっています。農林水産業の事業者の事業開拓に役立つだけでなく、今後の農林水産業全体の振興を図る上でも重要な融資制度といえるでしょう。