新事業への展開は中小企業においても重要なテーマとなっています。ニーズや価値観がめまぐるしく変化している現代のビジネスシーンにおいて臨機応変に求められる事業を展開できるかどうかは企業が生き残れるかどうかの大きな分かれ目となりますし、経営安定化を図る上でもある程度の多角化が求められる時代となっています。ひと昔前のようにひとつの分野でひたすら発展を目指していくというやり方が難しくなっているのです。
しかし中小企業が経営の多角化や事業転換のために新事業に乗り出すのは簡単なことではありません。なんといっても資金力の問題がつきまとうからです。新たな設備投資が必要になりますし、広報・宣伝にかかる必要、さらに人材の確保と育成にもお金がかかります。さらに新事業は開始してすぐに黒字になるといったことはほとんどなく軌道に乗るまでは厳しい経営状態を耐えていかなければなりません。中小企業はこうしたことに必要な資金力が不足しているためにうまくいかなかったり、事業そのものには優れた可能性があるにも関わらず軌道に乗せるまで持ちこたえられないといったケースが出てきます。
日本政策金融公庫による新事業活動促進資金とはそうした新事業に乗り出す際につきまとう資金力の問題を解消、サポートするために設けられた支援制度です。新たに新事業に乗り出そうとする企業に対して有利な条件で資金を融資しています。
ただし新事業に乗り出す企業なら必ず利用できるというわけではなく、一定の条件をクリアする必要があります。おもな条件は第三者の認定を受けていること。第三者とは「経営革新計画」「地域産業資源活用事業計画」「農商工等連携事業計画」といったものが挙げられます。加えて新事業に関わる技術やノウハウに新規性が見られる、事業承継を行う際の新事業開拓なども条件に加わっています。ですからこの制度の利用を検討する際には自分の会社がどの条件を満たすのかをよく検討したうえで準備を整えておく必要があるわけです。この点は金利の設定にも影響するので注意したい点です。
融資された資金は制度の対象となる新事業のために必要な範囲内で設備資金・運転資金両方に利用が可能です。融資限度額は7200万円。うち運転資金は4800万円となっています。返済期間は設備資金の部分は20年以内(うち据置期間が2年)、運転資金は7年以内(うち据置期間は2年)。新事業の開拓を検討している中小企業にとっては心強い資金調達の手段となるでしょう。