海外に事業を展開する際にはまとまった資金がどうしても必要になりますが、その際に資金調達の手段として活用できるのが海外展開資金です。正式には「海外展開・事業再編資金(企業活力強化貸付)」と言い、日本政策金融公庫が実施しています。
この正式名称からもわかるように、単に海外への進出に対してサポートするだけでなく、事業の再編を行う際、またそれによって企業全体の活性化のサポートにも活用できる制度です。
グローバリゼーションという言葉が広く普及し、国内市場だけでなく世界を相手に積極的に打って出る姿勢がさまざまな業種で求められるようになっています。
一方、世間一般では「海外進出」という積極的な意味合いでもたれる面もありますが、現在の国際市場・国内市場の動向では海外に進出しなければ生き残れない、という厳しい面もあるのです。
つまり海外進出はより多くの利益を得るための手段としてだけでなく、経営の安定化や売り上げ増を目指すうえで欠かせない手段ともなっているのです。
ですから大企業や業績が昇り調子の企業が海外展開を図るとは限らず、中小企業が生き残りをかけて新たな活路を見いだすために行うケースも多いわけです。
また、中小企業の場合、取引先の企業が海外進出を行うのに合わせる形で進出を余儀なくされるケースも起こりえます。
しかし海外展開には体力(資金力)が求められます。
そもそも進出に多くの経費を投入する必要がありますし、いきなり新たな市場に進出して利益をえられるほど甘くはありません。
業績が好転するまでしばらくの間は赤字覚悟で事業を続けなければならないケースもあります。
そのため資金力が不足している上に少なからぬリスクを抱える中小企業の海外展開に対して金融機関も融資をためらってしまいがちです。
そこで日本政策金融公庫は規模や業種を問わず広く企業が海外展開を行えるよう、この海外展開資金の制度を提供しているのです。
ただ海外展開を図るならどの企業でも無条件で融資を受けられるわけではありません。一定の条件を満たす必要があります。
まず海外展開がその企業(本社)の事業の延長線上として認められること、そして本社が海外進出後も国内に存続すること。海外展開の名を借りた別事業・会社の設立はできないわけです。それから海外展開の理由が条件を満たしていること。
融資限度額は総額で7200万円、うち4800万円までを運転資金として活用できます。返済期間は運転資金が5年、設備資金が15年以内。中小企業の海外展開をサポートする優れた制度といえるでしょう。