字面だけみると「そりゃ黒字会社の方が良いに決まっている」と思われるかもしれません。
「金融機関だって黒字じゃないとなかなか貸さないのでは?」と思う方も多いことでしょう。
しかし、一概にそうは言い切れないのが資金繰りや会社経営の奥が深い部分です。
上場企業のような公開会社はまた別ですが、日本の中小企業(特にオーナー企業)では、赤字にするも黒字にするもオーナーの胸三寸です。
例えば、
売上 1億円
経費 9,500万円
差し引き500万円の黒字企業A社と、
売上 1億円
経費 10,500万円
差し引き500万円の赤字企業B社があったとししましょう。
ここで融資が受けやすいのはどちらでしょうか?
黒字企業のA社と思われますか?
大切なのは「決算の中身」なんです。
単純に、経費の内、役員報酬だけとってみてもA社は社長の年収を500万円程度に抑えていることで、ギリギリ黒字なだけかもしれません。
年収500万円であれば、生活もギリギリで個人としてゆとりあるキャッシュはないでしょう。
金融機関は「黒字額もギリギリだし、万一会社に何かあれば、この社長は個人では責任を負いきれないな」と判断する可能性があります。(代表者を会社の連帯保証に付けることはよくありますが、要は代表者自身に保証人適格がないと判断されるわけです。)
B社は、社長の役員報酬が年収3,000万円くらいあるがゆえの赤字かもしれません。
その場合、役員報酬を2,000万円に減らせば簡単に黒字化してしまいますし、散財していなければ個人で持っているキャッシュも役員報酬から考えれば豊富にあるはずです。
金融機関も「決算書上は赤字だけど、実質黒字やな」「万一の際には社長個人の資産からも担保できそうだな」と判断するであろうことは想像に難くありません。
まあそもそも年収3000万円でそこまで散財していないのであれば、「自分銀行」として個人キャッシュから会社に貸し付ければ良いだけの話ですので、資金調達自体必要はないのかもしれませんが・・・
粉飾決算をする企業ではよく実態とかけ離れた無茶苦茶な黒字決算にして、本来払う必要のない税金を払ってでも金融機関からの融資を引っ張ることに躍起になっているケースもあります。
もちろん犯罪行為に該当しますので粉飾は論外ですが、個人収入を抑え過ぎて無理をして力技で黒字決算にしても実態を見られれば融資不可になる可能性は当然あります。
役員報酬は会計年度期間中には安易に変更が出来ないので、赤字か黒字かギリギリラインの業績だと赤字に転落することもあるでしょう。
もはやその分岐点上であれば、あまり赤字か黒字か気にしすぎても仕方ありません。
たっぷり個人報酬に加え、家族役員がいれば家族役員に所得分散をした上で、会社の最終的な利益としては法人税率の安い800万円程度に着地できれば、節税面も資金調達面も有利になります。
会社の財務は大切ですが、個人の財務状況も大切です。
個人でしっかりした財務を維持しておくことは、会社のピンチ時に自ら貸し付けることもできるし、会社の資金調達時にも有利に働くということ覚えておきましょう。見た目の赤字か黒字かだけに惑わされてはいけません。