会社経営のなかで大きなリスクのひとつに、確定した売上が予定通り回収できない、というものがあります。
売上を見越して次の収益を見越した先行投資や支出を進めるため、この売上が予定通り入ってこないことは大きな問題となります。
そんな時に必要な債権回収の手続きですが「お金」をめぐるトラブルは、多くの場合円滑には進みません。
目的とする債権を回収するためには、プロフェッショナルな交渉術を必要とします。このときに依頼する専門家が弁護士です。
債権回収を弁護士に依頼するメリットとは?
まず、債権回収は主に次のような方法が考えられます。
- 当事者同士の交渉で妥協点(和解点)の合意
- 弁護士若しくは弁護士間による交渉
- 裁判所の命令による回収命令
このような債権回収は、解決に時間がかかればかかるほど、「感情的なしこり」が大きいものとなってきます。
特に当事者同士で話し合う場合、上手な着地点への誘導はとても難しいもの。そのときに拠り所となるものが「法律」です。この法律を武器とする弁護士が第三者としての立場を活かしリードすることができます。
特に感情的なしこりを残したままの債権回収は、脅迫や恐喝として相手方に認識されてしまうことも。こうして警察に通報などされてしまえば、目的とする債権回収に至りません。
そのときに弁護士に代理人役を依頼することで、法律の扱いに長けた交渉を行うことができます。
どの段階で弁護士に依頼するべき?
それでは弁護士には、債権回収のトラブルが発生した(発生しそうな)、どの段階で相談すべきでしょうか。
これは、「早ければ早いほどいい」ということができます。
たとえばお金(債権)を貸した方が弁護士に依頼をして、行動を起こす前に全体像を経験豊富な弁護士に依頼した方が、解決可能性は高いものとなります。
- どのような交渉で進めていくといいのか
- 相手方には何を伝え、何を伝えずに交渉しておくといいのか
- どこまで当事者が交渉役に立ち、どこからは第三者であるプロフェッショナルに任せるといいのか
弁護士は相手方との窓口に立つ「渉外役」だけではありません。債権回収の目的を達成するための「統括プロデューサー」としての役割を期待することもできます。弁護士費用のかかる不安はありますが、交渉が失敗し債権回収不能となったときのコストは、弁護士費用どころではありません。早め早めに依頼するようにしましょう。
また、債権回収は相手方の所在がわからなくなることも。そのときにも、当事者間で回収することは難しくなります。弁護士は裁判所による強制取り立てを前提とした回収交渉を行うことができます。
相手方の会社が倒産してしまった場合
相手方の会社が倒産してしまっている場合はどうでしょうか。相手に支払い能力がないので、債権回収は不可能なのでしょうか。確かに倒産の場合、債権回収できる可能性は大きく下がります。
ただ、プロフェッショナルである弁護士への相談が早く、また適切な対応を進めると、相手が倒産していても債権者の権利が認められ、債権を回収することができます。倒産の情報を掴み次第、なるべく迅速に弁護士に相談するようにしましょう。
気づかぬうちに相手方にも弁護士がついていることも
交渉当初は相手方も感情にもとづいて交渉をしてきたものの、ある日突然対応が変わった。その場合は、気づかぬうちに相手方に弁護士がついた可能性があります。
その場合は、当事者間の交渉を引きずったままの、こちらの安易な行動や言動が、債権回収交渉のうえでの致命的なデメリットとなることも否定できません。こちらも早急に弁護士による交渉術を身につける必要があります。
弁護士に依頼することのデメリット
一方で弁護士に依頼することのデメリットもあります。それが、相手方との関係が修復不可能になるということです。
日本ではいまだに弁護士に依頼した交渉は不慣れです。弁護士に依頼した時点で、心理的に修復不可能となってしまう可能性が高いです。
弁護士に渉外役を依頼する際は、人間関係を「犠牲」にする覚悟がまだ必要といえるでしょう。(そもそも払うべきものを払わない時点で関係修復も何もないとは思いますが・・・)
これから日本も欧米のように、人間関係は人間関係、交渉は交渉と「割り切って」いけるようになるかもしれません。ただ、日本伝統の国民性もあり、まだまだ時間がかかりそうです。
まとめ
債権回収の方法と弁護士の活用方法についてまとめました。債権回収は非日常的な話であり、とても不安になりますが、感情を優先させてしまうと、まったく債権回収ができない事態も発生してしまいます。これは何よりも避けたいもの。
早い段階でプロフェッショナルな見解と交渉術を持つ弁護士を味方につけて、債権回収を円滑にするようにしましょう。