中小企業が事業資金を確保するうえで大きなネックとなるのが保証の問題です。通常は経営者が保証を行う形で融資を受けるわけですが、それだと経営者の負担が大きくなりますし、調達できる資金にも限界が出てきます。優れた事業計画やビジョンを備えていても事業資金を思うように確保できずに実行に踏み出すことができなかったり、運転資金の不足で事業が軌道に乗るまで持ちこたえられないといったケースも出てきます。そうした中小企業の可能性をつぶしてしまうような事態を防ぐために日本政策金融公庫が用意しているのが経営者保証免除特例制度です。
この名称の通り本来経営者が負うことになる保証が免除されたうえで融資を受けることができるようになる制度です。
この制度によって得られるメリットはたんに資金調達をしやすくなるだけでなく、経営者の負担を大幅に軽減できる点にあります。例えば経営者の交代、事業の継承が行われる時の問題。保証が免除されることで新たな経営者は過度な負担を抱えることなく経営を開始することができますから、事業の承継もスムーズに行われるようになります。もちろん、経営が悪化することによって保証人が自己破産に追い込まれるといった事態を防ぐ上でも重要な意味を持ちます。自己破産の4分の1が連帯保証によるものとも言われており、こうした資金調達の際の厳しい保証制度が中小企業の発展のうえで大きな足かせになっていることは以前から指摘されていました。
もちろん、経営者ならだれでもこの制度を利用できるわけではありません。何よりも経営している企業がきちんと事業を行い、かつ安定していることが大前提です。おもな条件は3つ。まず税務申告をすでに2期以上、事業資金融資取引が1年間以上行われていること。そして最近1年間の間に返済の遅延を行っていないこと。企業として活動を行いつつ健全な資金繰りが行われていることが重視されていることが窺えます。2つ目は最近2期において減価償却前の売上高経常利益が連続して赤字になっておらず、最近の決算期によいて債務超過に陥っていないこと。3つ目は法人から代表者に対して貸付や仮払い金がないことなどです。
こうした条件を満たすことで経営者の保証が免除されるわけですが、重要なのはこの制度の認定を受けた時点ですでに利用している融資についても保証の免除が行われることです。これから資金調達を行う場合だけでなく、現時点で利用している融資にもメリットが適用されるわけです。利率が0.2パーセント上乗せされるというデメリットもあるのでその点も踏まえつつ利用を検討してみてはいかがでしょうか。