粉飾決算とは、実際の経営状況とは異なる決算書を作成し、本当の利益と異なる状況をねつ造することをいいます。
粉飾決算のなかには税金対策のために、実際よりも儲かっていないように見せかけるケースもありますが、このような事例はそれほど多くはありません。
ほとんどの場合は、実際の業績よりも多くの売り上げや利益を上げていると装うものです。
具体的な方法はさまざまですが、架空の売り上げや来期に計上するべき取り引きを今期の売り上げとして加算するケースと、損失を隠すケースが一般的です。
粉飾決算は不正な会計処理ですから、罰則が科せられることもあります。
よく知られているケースでは、ライブドアが赤字決算であるにもかかわらず架空の売り上げや投資利益を計上し、黒字であるとの有価証券報告書を提出し、堀江貴文氏が逮捕された事例です。
また、2015年に世間の耳目を集めた東芝の粉飾決算では、6年間で1,500億円以上の利益を割り増しして計上したと報じられました。
これらは架空の利益を計上するケースです。
一方、オリンパスが10年以上も損益を帳簿に記載していなかったオリンパス事件は、損益を隠すタイプの粉飾決算となります。
大企業ですら長期にわたって粉飾決算をするのは、なぜでしょうか。
さまざまな理由が考えられますが、一口にいうと、会社が儲かっていないことが世間にバレると、さまざまな面で損をするからです。
まず、銀行などの金融機関からの融資が受けにくくなります。
粉飾決算をしなければ金融機関からの融資が受けられないのは、すでに経営が立ちゆかなくなっている証拠です。
早急に何らかの手立てを打つ必要があります。
また、赤字経営になると信用を失うので、企業間の取り引きを断られることがあります。
こうなると自社製品を作るための材料や商品が仕入れられなくなりますから、たちまち営業が立ちゆかなくなります。
このため、掛け売り取り引きをしても安心であることを示すために粉飾決算が行われることがあるのです。
建設業では、大規模な入札工事に参加できないという事情もあります。
そして、経営者の虚栄心も粉飾決算を起こす引き金となっています。
儲かっている企業の社長はチヤホヤされますし、経済誌からの取材も多く、周りから有利な情報が集まってきます。
しかし、経営が傾いていることがわかると、誰もが手に平を返したように去っていきます。
有能な社長というイメージを崩したくないために粉飾決算を行う事例も多いのです。
粉飾決算の見破り方
粉飾決算には主にありもしない売り上げをかさ増しして計上する方法と、発生した損失を隠す方法に分けられます。
かさ増し計上には損益計算書の売り上げや、利益を実際以上に増やして記載する方法などがあります。
グループ会社など、その会社と関連の深い会社からの売り上げの記載がある場合、かさ増しが行われている可能性があるので注意しましょう。
関連会社同士の取り引きはごまかしやすいので、総売上高から関連会社の売上高を差し引いた額が、実際の売上高であると考えた方が無難です。
また、自社が保有する土地を関連会社に売却して利益として計上し、お金ができたときに買い戻すという方法がとられることもあります。
固定資産を売却して利益を売り上げに計上している場合も、粉飾決算の可能性が高くなります。
固定資産の売却益は、特別利益として計上されるべきだからです。
このほか、将来買い戻すことを条件に製品を売っている場合もあります。
これはいってみれば、商品を担保にお金を借りている状態です。
したがって売上利益にはなりません。
このほかにも粉飾決算で多いのが、本来なら来期の売り上げに計上すべき取り引きを、今期分の売り上げとするケースです。
この場合は、その売り上げ分だけ来期の期首月の売上高が低くなっているはずです。注意して見てみましょう。
複数の企業間で、お互いが商品の売買を繰り返す、循環取り引きによる売上高のかさ増しも、よくある手口です。
このような場合は、参加企業が結託して徹底的な偽装が行われますから、一社が経営破綻して循環が途切れるなどしないかぎり、なかなか見破ることができません。
ただ、売上金の支払いの遅れや、他社から回ってきた自社商品を買い戻したときに棚卸しの資産額が急に増えるなど不自然な点があれば、そこからバレることもあります。
売上原価を実際よりも少なくすることで、売上利益を上げる方法もあります。
もっとも一般的な方法が、在庫をかさ増しすることです。
在庫を多くすれば流動資産が増えますから、売上原価を抑えられます。
売上原価が減少しており、在庫の回転期間が長い場合は、在庫のかさ増しが行われている可能性があります。
粉飾決算にはさまざまな方法があり、それによって見分け方も異なりますが、もっとも基本的な粉飾決算の見分け方は、損益計算書と貸借対照表を見比べることです。
特に売掛金や受取手形の回収率や、在庫回転率に不自然な点はないかを調べましょう。