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【目次(もくじ)】
- 1.リースバックの基礎知識
- 2.リースバックで資金調達を行った事例
- 3.経営者個人の強い味方「ハウス・リースバック」とは?
- 4.ハウスリースバックのデメリットは?
- 5.新生銀行の自宅マンションのリースバック商品「新生マイウェイ」とは?
- 6.リースバックの会計処理方法
- 7.リースバック方式(建設協力金方式)とは?
1.リースバックの基礎知識
リースバックとは主に不動産や車両などに用いられるサービスです。
例えば資金繰りが厳しくなった企業が自社ビルを売却し、購入した人からビルを借りてそのまま営業を続ける場合などに利用されます。
リースバックでは不動産の売却益を借入金の返済に充てられるので資金に余裕ができ、毎月の家賃を支払うだけでそのまま自社ビルだった物件が使えるので、メリットの大きいサービスです。
またリース物件は、よほどの大企業でない限り、会社の営業に活用している物件であるにもかかわらず、貸借対照表に計上されません。
貸借対照表に載らないということは、経営リスクのある取引が社外からはわからないということですから、会社の信用やイメージを損なわずにすむのです。
企業向けのリースバック契約では、建物はもちろんのこと車両や荷役機械などの運搬用設備、OA機器、POSやショーケースなどの商業用設備、工作機械など多岐にわたる物件が対象となります。
この場合は投資家が購入するのではなく、リース会社が購入して、改めて貸し出すという形をとるのが一般的です。
業務に必要な設備もリースバックを利用すれば、毎月のリース料を支払うだけで、これまでどおり設備や物件を使って営業できます。
固定資産を売却することで資金面に余裕ができる上に、通常のリースと同様に会計処理の手間がなくなるというメリットがあるのです。
2.リースバックで資金調達を行った事例
住宅設備メーカーのA社が設備投資のために銀行に追加融資を求めたところ、近年続く業績の低下から融資枠が大幅に縮小され、500万円の融資しか受けられないことがわかりました。
これでは焼け石に水です。
そこで工場で使っている設備が比較的新しかったのでリース会社にリースバックを打診したところ、十分に資産価値があると判断されました。
A社は、新たな設備のリースとともに既存設備のリースバック契約を結び、新規設備の導入コストを最低限に抑えることができたうえに、2,000万円の資金調達に成功しました。
車両のリースバックなどの場合は、会社が所有する複数台の車両をリース会社に売却し、メンテナンス込みのリースとして、引き続き営業や配送に利用できます。
メンテナンス込みなので、これまで自社で行ってきた車両に関する管理業務はすべてリース会社が行ってくれます。
低コスト化や資金繰り面だけでなく、業務の効率化というメリットも期待できるのです。
3.経営者個人の強い味方「ハウス・リースバック」とは?
リースバックには、会社資産のみならず、個人の自宅に住みながら自宅を売却できるハウス・リースバックサービスもあります。
事業がきつくなれば個人の生活も当然圧迫します。個人が潰れてしまえば会社の再建もままなりません。
会社を守ることと同時に、社長個人の生活だって維持していかねばならないのです。
「長期ローンの返済が苦しいが、売却すると住む家がなくなってしまう」
そのような心配からなかなか一歩踏み出せない方も多いのですが、事態が悪化してしまう前に手を打たなければ手遅れになります。
売却後はリース契約をしてそのまま今迄と同様に家に住めるわけですし、将来的には住んでいたそのお家を、再び購入することも可能です。
4.ハウスリースバックのデメリットは?
ハウスリースバックのデメリットは、その不動産を利用し続ける限り、家賃(リース料)を支払い続けなくてはならないことがあげられます。
また、もしリース料を滞納すればその時は不動産を手放さざるを得ません。
そのため、毎月のリース料はしっかりと払えるように準備しておく必要があります。
リース料の相場は不動産評価額の年率10%あたりなので、ある程度の予想が可能です。
ただマイホーム等の不動産を売って資金調達をしたいだけなのであればその不動産を借り続ける必要はないはずです。
そのため、持ち家から賃貸に切り替えるリースバックでは、あらかじめ「買戻し」を想定しています。
つまり、賃貸中に調達した資金を使って事業がうまくいけば、その収入で不動産を買い戻して再び自分の所有物にすることができるわけです。
ただし、もちろん想定はあくまでも想定にしか過ぎず、順調にいかないこともあります。
買い戻す資金がなかなか集まらなければ結局その不動産は手放すしかありません。これもリースバックのリスクであり、デメリットであるといえます。
それからそもそも不動産の買主が見つからず、リースバックができないことがあるのもデメリットのひとつです。
買主は賃貸収入が得られるといってもひとつの不動産を購入するわけなので、やはり取引には慎重になります。
不動産の立地や条件が良ければすぐに買主が現れるかもしれませんが、その逆もありえるのです。
また買主が見つかって問題なく不動産を売却できるとしても、残っている住宅ローンが完済できない場合は、融資を受けている銀行がリースバックを許可しない可能性があります。
そのため、リースバックを行う時は事前に不動産会社と相談しておき、銀行の許可が得られそうかどうかを確認しておくことが大切です。
この相談しだいではリースバックがしにくい状況下でも、銀行の許可を得られることがあります。
5.新生銀行の自宅マンションのリースバック商品「新生マイウェイ」とは?
「新生マイウェイ」は、新生銀行とグループ会社の昭和リースが平成29年9月15日から取り扱いを始めた商品で、自宅に住み続けながら資産の有効活用ができるというものです。
広告展開や問い合わせの対応は新生銀行が行い、物件の売買等の仲介業務は伊藤忠ハウジングが行っています。
仕組みは、まず昭和リースが顧客から物件を買い取り、それと同時に顧客と定期建物賃貸借契約を結びます。
顧客は昭和リースに賃料を払いながら住み続けることができます。
契約期間が終わると、その時の市場価格でその物件を第三者に売却します。
昭和リースからは物件の売却代金と購入代金の差額を受け取ることができます。
取り扱う物件は、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県にあるマンションです。
契約期間は10年間ですが、5年毎の再契約もが可能です。
申し込めるのは申し込みの時点で満50歳以上である方です。
使途は自由で、団体信用生命保険への加入は不要、連帯保証人も必要ありません。
手数料は税込みで54,000円かかります。物件は 評価額が4,000万円以上2億円未満のマンション、所有権が契約者単独で、敷地権が所有権であるものです。また、新耐震基準物件であることも必要です。
6.リースバックの会計処理方法
ファイナンス・リース取引によるリースバック取引の場合、借手は売却に伴う損益を売却時にすべて計上するのではなく、売却損益を繰延処理します。
そして、該当物件の減価償却費の割合により、減価償却費に加減して計上することになります。
売却損の場合は長期前払費用、売却益なら長期前受収益です。
ただし、リース物件の見積市場価額が帳簿価額を下回ったために売却損失が出たという場合には、繰延処理しないで売却時の損失とします。
貸手の会計処理は通常のファイナンス・リース取引の場合と同じです。
また、リースがオペレーティング・リースである場合は、資産売却とリース取引は個別の取引とされます。賃貸借処理になるため、売却時点で売却損益を計上します。
ファイナンス・リース取引によるものかどうかはリース適用指針に従いますが、経済的耐用年数はリースバックの際のリース物件の規格や性能、陳腐化などから算出した経済的使用可能予測期間を使用します。また、リース物件の見積現金購入価額は、実際売却価額になります。
リースバックによる物件を、第三者にほぼ同様の条件でファイナンス・リース取引によりリースした場合は、繰延処理しないで損益に計上します。
ただし、取引の実態からして該当物件の売買損益が実現しているとみなされることが必要です。
7.リースバック方式(建設協力金方式)とは?
リースバック方式(建設協力金方式)は、所有している土地の有効利用を考えているオーナーにとって活用しやすい方法です。
土地を活用する方法の一例として、オーナーが開業者(借主)と土地の賃貸借契約をして土地を貸し、借主がそこにコンビニやファミレスなどを建てて営業し、オーナーは貸し賃を受け取るという方法があります。
一方、リースバック方式(建設協力金方式)では、開業者が不動産会社や建設会社を通してオーナー(貸主)に建設協力金を差し入れ、オーナーがそのお金を利用して建物を建てます。
建物はオーナーの名義になります。建物が完成したら、建設協力金は賃貸借契約の保証金とされます。これを月々の賃料と相殺して返済していきます。
この方法なら、自分で建物を建設する資力がないオーナーでも、開業者に立替えてもらったお金で土地に建物を建設できるため、金融機関から建設資金を借りなくてもすむというメリットがあります。
開業者にしてみれば、自分の希望通りの建物を建設できるというメリットがあります。
開業者にとってのデメリットは、建築資金を準備しなければならないことと、経営不振で契約期間の途中で事業をやめたいと思っても保証金が戻ってこないという点です。